導入事例
オタフクホールディングス株式会社様
業務影響ゼロでSAP S/4HANA® Cloudへリビルド──グループ6社のDX基盤を刷新し、持続的な成長を支えるオタフクホールディングスの挑戦
~1,000超のテストパターンと複数回の移行リハーサルで「業務を止めない基幹刷新」を実現し、Clean Core化と調達業務50%短縮、AIなど将来の技術拡張に備えた基盤強化を達成~
課題
- 業務量の増加・複雑化によりアドオンが増加し、保守負荷・改修リスクが増大
- クライアント分断による非効率
- MRP・実際原価の未活用
- 将来拡張に耐える基盤不足と保守期限への備え
効果
- アドオンを約50%削減しClean Core化を実現、1,000超のテストにより業務影響ゼロで安定稼働
- クライアント統合により、マスタ二重管理や不要な伝票計上を解消、物流・配送業務のスピードと正確性が向上
- MRP活用で購買発注時間を約50%短縮、在庫確認も年間約200時間削減、品目元帳による実際原価運用を開始
- 保守期限の課題を解消、AI活用や海外展開にも柔軟に対応可能なシンプルで拡張性の高い基盤へ刷新
オタフクホールディングス株式会社様
- 設立
- 1952年10月(創業:1922年11月)
- 本社所在地
- 〒733-8670 広島県広島市西区商工センター7丁目4-27
- 事業内容
- オタフクソースを中心とするOtafukuグループの事業企画立案、各事業会社の統括管理
概要
AI活用が本格化するこれからの時代、企業にはデータに基づく迅速な意思決定や、グループ全体でのシームレスな事業運営がますます求められています。
オタフクホールディングス株式会社でも、新事業や将来のグローバル展開、そしてグループ6社※横断の事業成長を支えるうえで、基幹システムの在り方を見直すタイミングが訪れていました。アドオンの累積やクライアント分断など、既存システムでは将来の拡張性やデータ活用に限界を感じていたほか、SAP ERP 6.0のサポート終了を見据えた備えも必要となっていました。
こうした背景のもと、オタフクホールディングス株式会社が推進する、グループ6社※を対象としたSAP移行プロジェクトにおいて、SAP ERP 6.0からSAP S/4HANA® Cloudへのリビルドを実施しました。オタフクソース株式会社(以下「オタフクソース」)におけるFI(財務会計)/CO(管理会計)/SD(販売管理)/MM(購買管理)/PP(生産管理)の刷新に加え、グループ共通の会計領域を含む基幹システムを刷新し、本社と日光工場のクライアント統合、290本あったアドオンの約50%削減によるClean Core化、MRPの本格活用、品目元帳による実際原価運用の開始など、将来の事業拡張に耐えるシンプルで強い基幹システムを構築しています。
プロジェクトは、テクノスジャパンと二人三脚で、要件定義から結合テスト、IF/性能/運用テスト、複数回の移行リハーサルを重ね、2025年5月の本番移行では、業務影響ゼロで稼働を実現しました。
本稿では、導入の背景や狙い、そしてアドオン削減や購買発注時間の大幅短縮といった具体的な効果について、オタフクホールディングス株式会社 新基幹システム移行プロジェクト プロジェクトマネージャー※※下平邦夫氏、同 IT推進部システムデザイン課 シニアスタッフ山谷柚季氏にお話を伺いました。
※オタフクホールディングス、オタフクソース、お多福醸造、お好みフーズ、OPP、ナカガワ
※※プロジェクト当時。現在はオタフクソース株式会社 生産管理部 部長

導入前の課題
1.業務量の増加・複雑化によりアドオンが増加し、保守負荷・改修リスクが増大
業務の変化に合わせ、アドオン開発を行いシステムが複雑化。業務とシステムの間にギャップが徐々に生まれ、保守・改修の負荷とリスクが増大していた。
2.クライアント分断による非効率
本社と日光工場が別クライアントで運用されていたため、会社間取引やマスタ二重管理、不要な伝票計上が発生し、運用・統制・メンテナンスの各面で非効率が生じていた。
3.MRP・実際原価の未活用
生産計画/調達の自動化(MRP)や実際原価の運用が進まず、工場の業務効率や原価精度に課題が残っていた。
4.将来拡張に耐える基盤不足と保守期限への備え
既存システムでは将来の事業拡張に不安があった。加えて現行SAPのサポート終了への備えも必要だった。
導入後の効果
1.基幹の安定稼働とClean Core化
SAP ERP 6.0からSAP S/4HANA Cloudへ計画的に切り替え。フェーズゲートと複数回の移行リハーサルで品質を確保し、業務を止めない安定稼働を達成。既存アドオンの影響アセスメントと再設計により、アドオン本数を約50%削減し、Clean Core※を実現した。
※Clean Core:SAP標準機能を軸にアドオン(個別開発)を最小化し、将来拡張性と保守性を高める設計思想
2.クライアント統合による業務効率化と運用負荷の低減
本社と日光工場のクライアント統合を実施し、会社間取引やマスタ二重管理、不要な伝票計上を解消。業務運用・統制・メンテナンス負荷を大幅に低減した。さらに、受注伝票に紐づく配送ロジックの拡張機能を見直したことで、倉庫側での確認作業が削減され、自動提案される配送ルートも効率化されるなど、SCM領域でも業務スピードと正確性が向上した。
3.MRPと実際原価計算の基盤整備
本社工場でMRP※の運用を開始し、生産とロジスティクスの異なる稼働カレンダーも標準機能で正しく表現できるようになった。また、手作業だった所要量計算・発注判断をMRPに集約することで購買発注業務の時間を約50%削減した。これにより、調達担当4名による発注関連作業の1日あたりの延べ作業時間が50%減となり、大幅な業務効率化を実現した。あわせて品目元帳による実際原価計算の運用を立ち上げ、原価管理の高度化に向けた基盤を整えた。さらに、MRPエリアの設定により複数倉庫の在庫引当が可能となり、在庫の情物一致が向上。日々の在庫確認・問い合わせ対応が減少し、年間約200時間の作業削減につながった。
※MRP:Material Requirements Planning:需要に基づき部材の所要量と発注タイミングを自動算出する仕組み
本プロジェクトでは、購買領域での所要量計算・発注判断の自動化に加え、MRPエリアの設定により複数倉庫の在庫引当ロジックの最適化にも活用している
4.将来拡張に対応するシンプルで強い基幹基盤の構築
SAP S/4HANA Cloud Private Editionの採用により、AIなどの新技術や海外展開にも柔軟に対応できる、標準機能を軸としたシンプルで拡張性の高い基幹基盤へ刷新。あわせてSAP ERP 6.0のサポート期限にも計画的に備え、中長期視点の基盤運用を可能にした。
「未来の事業を止めない」──オタフクホールディングスが語る基幹改革とテクノスジャパンの伴走
SAP S/4HANA Cloudリビルドに踏み切った理由、移行で重視したポイント、そしてClean Core確立に至るまでの道のり。
オタフクソースの基幹改革を率いたお二人に話を伺いました。
鉄板粉もの文化を世界へ──オタフクグループの事業とグローバル展開
―はじめに、事業内容について教えてください。
下平氏:当社はソース、酢、たれ、その他調味料の開発・製造・販売を手掛けています。家庭用の他、レストランなどの業務店様向けオーダーメイド商品など約2,000種類ほどの調味料を取り扱っております。また、近年ではアメリカと中国、マレーシアに工場を建設し、日本を代表する食文化であるお好み焼をはじめとした鉄板粉もの文化を国内だけでなく、世界中に広める普及活動に力を入れています。
将来の変化に対応できる柔軟でシンプルなシステムの必要性
―今回のプロジェクトを開始するに至った背景を教えてください。

オタフクソース株式会社 生産管理部 部長 下平邦夫氏
下平氏:2004年に旧システムからSAPへ切り替えて以降、業務の変化に合わせアドオン開発してきた形が積み重なり、業務とシステムのギャップが徐々に生まれていました。また会社統合したグループ会社(旧ユニオンソース、現日光工場)と本社が別クライアントで運用されており、会社間取引やマスタの二重管理といった非効率も生じていました。グループ企業の増加や新領域の事業挑戦なども進みつつある中、現行SAPのサポート終了への対応問題も踏まえて、将来のビジネス変化に対応可能な柔軟性と拡張性を備えたシステムへの移行が必要でした。
事業の継続性を高めるために、Clean Coreの確立へ
―こうした課題を受け、システム刷新に踏み切った最大の狙いは何だったのでしょうか。
下平氏:最大の狙いは、事業の継続性を高めることです。そのため、移行にあたって業務を止めないことは最重要でした。そのうえで、過剰なアドオンに依存しない運用へ舵を切り、SAP S/4HANA Cloud標準を軸にしたClean Coreを確立することを目指しました。
長年のSAP資産を活かし、リスクを最小化する最適解
―SAP S/4HANA Cloudを選択した理由をお聞かせください。
下平氏:まず長年のSAP運用で蓄積した知見を活かせるという点、切り替え時のリスクと負荷を最小に抑えられるという点でSAP S/4HANA Cloudが優位でした。会計を一気通貫で管理できることも大きな要素です。また将来の海外展開時に会計モジュールを共通利用できるという点でも当社の要件と適合していました。結果的に、事業継続性・会計の一貫性・将来拡張性の三条件を満たす最適解としてリビルドを選択しました。
業務理解・提案力・熱意──テクノスジャパンを選んだ決め手
―数あるパートナーの中で、株式会社テクノスジャパンをパートナーに選んだ理由を教えてください。
下平氏:複数社のコンペを実施した中で当社要件を最も汲み取った提案をいただけた点です。ユニオンソースへのSAP導入実績に裏打ちされた業務理解も含め、安定したプロジェクト推進に期待が持てました。また、提案時に一番熱意を感じたのもテクノスジャパンでした。コンペが終わったあとに、参加者の間で「テクノスさんよかったよね」という話になったのを覚えています。
6社横断の大規模プロジェクト──刷新範囲と全体像
―プロジェクトのスコープと全体像を教えてください。
下平氏:オタフクソース(本社・日光工場のクライアント統合を含む)でのFI、CO、SD、MM、PPを含むフルモジュールに加え、オタフクホールディングス、お多福醸造、お好みフーズ、ナカガワ、OPPの5社における会計領域(FI/CO)を刷新しました。レシピに関わる品目はSAP S/4HANA Cloud標準の変更マスタで管理し、OQAS(レシピ管理システム)、電子指図、ハンディ、EDIといった周辺システムとの連携も見直しています。データ利活用はBusiness SPECTRE(SAP BIプラットフォーム)を用い、ECCとSAP S/4HANA Cloudの双方から外部DWHへデータを転送し、BIは自社で開発・運用する体制です。
―うまくいった点(成功要因)について教えてください。
下平氏:前段でBPRのプロジェクトを行っており、その中で課題を洗い出し業務要件の検討を進めていたため、ブレることなくポイントを絞って要件定義を行えたことです。また移行プロジェクト中は事務局として、メンバーが前向きに取り組めるような雰囲気をつくり、メンバーの考えを尊重し自主的な検討を促しつつ、スケジュール管理とフォローが必要な大きな課題になりそうなものは早期アラートを上げてもらうことにフォーカスするようにしました。結果としてメンバーが自身の持つ業務経験やSAPのノウハウをもとに積極的にプロジェクトを推進し、成功を大きく引き寄せてくれました。
山谷氏:テクノスさんの綿密な提案や緻密なテストも大きなポイントでした。特にテストについては、「これで失敗すること、ありえるの?」という声がメンバーから出たほど細かく実施いただきました。その結果、業務影響ゼロの本番稼働となりました。
―反対に、苦労した点はありますか?
下平氏:SAP S/4HANA Cloudへの移行と同時に、SAPと密接に連携させているレシピ管理システムのマイグレーションもサブプロジェクトとして行ったので、移行作業におけるマスタ整合性維持のための確認やメンテナンス方法の確立に苦労しました。SD領域はアドオンも多くカスタマイズが複雑だったため、テストパターンが1,000以上と膨大になり実施が大変でした。オタフクにとっての新機能のMRPや品目元帳については知見がなかったため、一から学びながら検討を進めたため手戻りも少なからず発生しました。機能をきちんと理解しカスタマイズしていくことは負荷が高かったです。テクノスさんが検証環境を複数用意し、追加テストで対応してくれたことには感謝しています。
「ここまでやればいける」──徹底したテストが生んだ安心感
―テクノスジャパンと推進して良かった点を教えてください。
下平氏:何か問題が発生した際にはオタフク、テクノス双方が相手の立場を尊重しつつも率直な会話を通じて解消できる、非常にいい関係性を築くことができました。特に移行リハーサルはなかなか思うような結果が得られずインシデントが多数発生したものの、当初の想定回数を超えて根気強く何度もリハーサルを繰り返し、課題を解消していただきました。

オタフクホールディングス株式会社 IT推進部 システムデザイン課 シニアスタッフ 山谷柚季氏
山谷氏:マスタ移行について当社の不安に寄り添っていただけたことが印象に残っています。テクノスジャパン主導で緻密に設計・検証していただき、業務側が確認に専念できる体制が整ったことで、プロジェクト全体に「ここまでやればいける」という安心感が生まれていました。結果として、MRPの対象品目が増えたにもかかわらず、当初のスケジュールよりも前倒しで非常に円滑に本番移行を完了し、つつがなく安定稼働に到達できました。
スムーズな稼働、アドオンの半減、購買発注の時間短縮を実現
―導入効果について教えてください。
下平氏:最重要指標である「業務を止めない」ことを達成し、何事もない静かな本番稼働を実現しました。また290あったアドオン本数を半減したうえで新規アドオンは3本に抑え、Clean Coreを確立できました。本社工場でのMRPの運用も始まり、購買発注の時間が約半減するほど大幅に短縮されました。
山谷氏:品目元帳による実際原価計算の運用も始まりました。効果が出てくるのはまだこれからになりますが、ユーザーからの苦情もなくスムーズに稼働しています。そのほかにFIではインボイス制度対応の手動業務が自動化されました。またSDでは引当ロジックや出荷前作業の見直し、PPでは指図や実績管理の再整備を通じて、10年後を見据えた「適正な在庫が、適正な在庫から出る」仕組みを整えることができました。
事業拡張の基盤として、MRP運用の拡大とBI活用を推進
―今後の展望をお聞かせください。
下平氏:MRP利用の対象品目のさらなる拡大や、前提となる生産計画を含めた業務スケジュール全体の見直しなどの改善を進めます。現在はPP/MM領域のデータがBIツール側で十分に活用できていないのでその点も改善していきたいです。今後もSAPを事業拡張の基盤として最大限に活用しながら、継続的な成長を目指してまいります。そしてその過程で「鉄板粉もの文化」の魅力がさらに広く世界に広がっていくことを願っています。

テクノスジャパンからひと言(読者の皆様へ)
今回のプロジェクトでは、6社横断での基幹刷新と2工場のクライアント統合という大きな構想のもと、オタフクホールディングス様と共に、将来の事業成長を支える「強いシステム基盤づくり」に取り組みました。単純なコンバージョンではなくリビルドで構築したことで、Clean Core化やMRP活用による業務効率化など、多くの要件を組み込むことが可能となり、次の10年、20年を見据えた土台を再構築できました。テクノスジャパンは、これからもERPを中心とした新たな機能拡張や運用最適化をご支援し、オタフクホールディングス様が目指す姿の実現に向けて伴走してまいります。
