導入事例

月桂冠株式会社様

中長期な展望を視野にリアルタイム経営と社内業務改革を実現したERPビッグバン導入

取組

  • 業務改革ITソリューションを武器にビジネスコンサル実現
  • 用途、部門で異なる部分最適システムをERPで全面刷新
  • 明治時代から続く酒造業ならではの独自業務に柔軟対応

効果

  • 経営者、現場双方の視点をもとに全体業務の最適化
  • ソリューション導入と同時に起こった社内業務改革
  • リアルタイム可視化による経営決定の早期化

酒造・食品業界におけるテンプレートソリューション SAP AWARD OF EXCELLENCE 2011 優秀賞「プロジェクト・アワード受賞」

月桂冠株式会社

月桂冠株式会社

創業
1637年
設立
1927年5月15日
本社所在地
京都府京都市伏見区南浜町247番地
事業内容
清酒、プラムワイン、本格焼酎、奈良漬の製造販売。ドイツビール、ドイツワイン、フランスワインの輸入販売。基礎化粧品の販売を事業として展開。
URL
http://www.gekkeikan.co.jp/

ベストプラクティス適用の徹底と、「業務改革を促すアドオン判定」の実施 テクノスジャパンの現実的な提案とサポートを高く評価

1637年(寛永14年)に屋号を「笠置屋」、酒銘を「玉の泉」として創業した月桂冠株式会社。1910年、当時の鉄道省が月桂冠の「コップ付き小びん」を駅売りの酒として採用したことをかわきりに大きな躍進を遂げ、やがて月桂冠ブランドを確立。その後も、「品質第一」をモットーに、年間を通じて酒造りを行なう四季醸造システムや米国での酒造蔵の稼働など、革新性、創造性の高いチャレンジを続けている。一方、部分最適によりシステムを導入してきたために、業務間の連携に課題を抱えていた月桂冠では、SAP ERPのビッグバン導入を決定。テクノスジャパンのサポートにより、平日の夜、一晩での本番移行を実現した。

用途や部門ごとに異なっていたシステムの弊害2007年問題による技術の伝承も課題

「Quality・Creativity・Humanity」という基本理念、および「健をめざし、酒(しゅ)を科学して、快を創る」というコーポレートブランドコンセプトに基づいて事業活動を展開する月桂冠。「Quality」では顧客満足の高い最高の品質を、「Creativity」では常に創造し革新し続けることを、「Humanity」では社員の能力を高めるとともに人間性を重視することを目指している。
また2002年には、「うるおいを あなたと」「For Your Lifestyle Taste」というコーポレートブランドステイトメントを制定。 こうした月桂冠の取り組みに、ITシステムは不可欠となるが、製造関連システム、販売物流関連システム、会計システムなど、部分最適で導入してきたシステムは、時代とともに業務にさまざまな弊害を及ぼすようになっていた。月桂冠の情報システム部 情報システム課長である冨永氏は、次のように語る。
「基幹システムは、ものを買って、作って、売ってという、企業の源泉である売上の基礎になります。この基幹システムを、3社~4社の仕組みで構築してきたために、データを一元管理することができず、現場の作業が増えるだけでなく、経営的な意思決定も困難になっていました。また2010年の保守期間の終了で、部品の供給も止まってしまうことから、いかに対応するかが大きな課題となっていました」
また当時は、さまざまな業界で団塊の世代の技術者が定年を迎える「2007年問題」にも注目が集まっており、月桂冠でも大量の技術者が数年のうちに退職してしまうことから、技術やノウハウを次の世代にきちんと伝承することも必要だった。「もちろんITシステムも伝承していかなければなりませんでした」と冨永氏。そこで2008年9月より、基幹システムの刷新プロジェクトをスタートした。

質、創、匠、大福の4つのフェーズで大福帳プロジェクトをスタート

基幹システムの刷新プロジェクトでは、まずシステム全体をいまのまま延命しながら再構築するのか、あるいはリスクは伴うがビッグバン方式で作り替えるのかが大きな課題のひとつだった。冨永氏は、「今後、10年、20年、利用できる基幹システムを構築することをひとつのゴールと考えた場合には、1から作り直すビッグバン方式による基幹システムの刷新が賢明だと判断しました」と話す。
そこで、「質のフェーズ」「創のフェーズ」「匠のフェーズ」「大福のフェーズ」という、4つのフェーズでプロジェクトを推進。質のフェーズでどのようなシステムが必要なのか、そのためにはどれだけの費用と時間がかかるのかを算定し、創のフェーズで実際にシステムを構築、匠のフェーズでデータや業務をすべて移行して使いこなす。そして最後の大福のフェーズでは、会社の業績に貢献することを目指している。
このプロジェクトは、“大福帳プロジェクト”と名付けられた。月桂冠では、横文字のプロジェクト名が多かったのだが、日本酒の会社ということもあり、和風なプロジェクト名にしようと考えた。冨永氏は、「月桂冠には昔の大福帳が残っていますが、大福帳には会社のすべてが記録されています。もちろん明治時代になってからは複式簿記を使っていますが、昔の大福帳のようにすべてのデータを一元管理することを目指しました」と話す。
つまり、基幹システムだけで、必要なすべての情報が手に入る仕組みを実現することを目的に、大福帳プロジェクトと名付けられている。冨永氏は、「特に大福という言葉には、利益という意味もあるそうなので、大福のフェーズでは、利益を見える化したいという思いも込めています。さらにシステム名も“大福帳システム”に統一しました」と話している。

ユーザー目線での提案を評価してテクノスジャパンをパートナーに

冨永 光則氏
情報システム部
情報システム課長
冨永 光則氏

テクノスジャパンを選んだ理由を冨永氏は、次のように語る。「いろいろな評価ポイントはあったのですが、テクノスジャパンの提案を聞いてユーザー目線で一緒に苦労してくれそうだと感じたことが最大の理由です。また、コストパフォーマンスが高かったことも評価しました」
月桂冠の大福帳システム構築では、その中核となるERPパッケージとして、SAP ERPが採用されている。SAP ERPを導入する強みを冨永氏は、「基本機能がすべて含まれていることです」と話す。たとえば「受注」や「出荷」「会計」などは、どこの会社でも大きな違いはない。一方、日本酒を造るという作業は、月桂冠オリジナルの業務であり、この部分はERPパッケージでは実現できない。
共通業務に関しては、ERPパッケージをそのまま使うことが有効であり、業務の標準化や業務改革にもつながる。ERPパッケージにあわせて業務を変更することには、現場の抵抗が少なからずあるが、すべての要求に応じると、アドオン開発がどんどん増えてしまい、コストも期間もかかってしまう。またバージョンアップの場合にもトラブルやテスト工数が増えてしまう。
「どこまでアドオン開発するかが、大福帳プロジェクトで最も苦労した点です。時間はかかりましたが、本当にアドオン開発が必要なものと業務の変更で吸収できるものを明確にすることができました。一般的にERPパッケージの導入は、開発、テストに時間がかかるといわれますが、我々は要件定義に最も時間をかけました」と冨永氏は話している。

平日の夜間でSAP ERPを本番稼働初日の作業終了時には拍手喝采も

SAP ERPによる新しい基幹システムの本番稼働について冨永氏は、次のように語る。「新旧システムを平行稼働させ、新システムが安定したら旧システムを停止する方法を考えていました。しかしこの方法では、新旧両方のシステムを運用しなければならないので現場の苦労が2倍になります。そこで1日で切り替えができないかと考え、テクノスジャパンの担当者に相談してみると、“不可能ではない”という回答でした」
また経理部から、期が変わる時期に新システムを稼働してほしいという要望もあり、2010年4月1日に本番稼働することを決定する。冨永氏は、「平日の夜間、一晩だけでシステムを切り替えるのは前代未聞だときいています。かなり厳しいスケジュールだったこともあり、移行準備のフェーズに入ったところで仕様変更をいったん凍結し、アドオン開発も禁止しました」と当時を振り返る。
移行当日は、物流部門を早めに締め切り、16時ごろからシステムの移行作業を開始。物流部門は翌朝5時から新システムで前日繰越分の作業を実施する予定で作業を進めた。冨永氏は、「最悪なのは顧客に品物が届かなくなることなので、新システムの移行に失敗しても、旧システムに戻せることを前提に作業を行いました。計画上では問題なかったのですが、マスターの移行に問題があり、2時間しかない予備時間を使いきってしまいました。」と話す。
「この時点で旧システムに戻す手順も考えていましたが、最終的には現場やテクノスジャパンの担当者のがんばりで無事に本番稼働できました。その後、新しいシステムと現場の格闘が始まります(笑い)。通常は19時くらいに出荷業務が終わるのですが、その日は22時ごろまでかかりました。1日目の作業が終わったときには、現場で拍手喝采がおこり、新システムの稼働を実感しました」(冨永氏)

稼働から1年半、安定稼働を高く評価現場とテクノスジャパンの信頼関係も構築

月桂冠株式会社

大福帳システムの導入効果を冨永氏は、「基幹システムの本番稼働から1年半が過ぎましたが、最初の決算も終了し、2回目の半期決算も終了しました。システムとしては非常に安定して稼働しています。システムの本番稼働時には、深夜まで帰れないということもありましたが、現在は定時で退社できるようになっています。また旧システムでは、毎日夜間当番というのが交代でありましたが、それもなくなりました」と話す。
またテクノスジャパンの評価について冨永氏は、次のように語る。「今回、ERPパッケージのビッグバン導入だったので、現場はこうしたい、経営者はこうしたいと、良い意味でのさまざまな利害関係がありました。こうした場合、プロジェクトが煩雑になる傾向がありますが、テクノスジャパンには、このアドオン開発は必要、ここは業務を変更すると、現場、経営者、開発者の目線で、常に現実的な提案をしてもらえました」
「一般的にITベンダーはシステムを設計・開発して終わりですが、業務の変革まで提案してもらえたことは高く評価しています。これまでの経験では、現場とITベンダーはなかなか仲良くなれないのですが、今回はチームごとに懇親会を開くほど一体感がありました。我々はお酒の会社なので懇親会は重要でした(笑い)。最終的には、テクノスジャパンが判断したのだから、というところまで信頼関係を築けました」(冨永氏)

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