導入事例

 

 

ヤマサ醤油株式会社様

汎用的なパッケージソフトを段階的に導入することにより、リスクを抑制しつつ、業務の属人化を解消

取組

  • グローバルスタンダードであるSAP S/4HANAの導入
  • 業務の本質を深堀りしたシステム要員と現場責任者の徹底的な議論
  • パッケージの標準機能に合わせた保守性の高い業務プロセスの構築

効果

  • 迅速な業績把握と分析ができるようになり、経営判断が高度化
  • 部分最適から全体最適への完全シフトによる、本質的な業務効率化の実現
  • 業務の属人化が解消され、情報システム部門にシステム開発未経験者の配属が可能に
ヤマサ醤油株式会社ラインナップ画像

ヤマサ醤油株式会社様

創業
正保2年(1645年)
設立
1928年11月
本社所在地
〒288-0056 千葉県銚子市新生町2-10-1
事業内容
1.醤油の製造・販売
2.各種調味料の製造・販売
3.医薬品類の製造・販売
4.その他

ヤマサ醤油株式会社は、迅速な業績把握およびデータの分析で経営判断を高度化するために、新たにSAP S/4HANAを導入しました。SAP S/4HANAを導入した背景と導入後の効果・変化について、経理・総務本部 部長 情報システム管理室長の網谷さんにお話を伺いました。

網谷さんの画像経理・総務本部 部長 情報システム管理室長 網谷さん

属人化による高い現場負荷

―はじめに、事業内容や業務内容について教えてください。

網谷さん:ヤマサ醤油は、醤油の製造・販売に加えて、昆布つゆや昆布ぽん酢などの「つゆ・たれ」製品も手掛ける食品メーカーです。また、医薬・化成品、診断薬の製造・販売も行っており、弊社の技術から生まれた核酸関連物質は、抗がん薬や抗ウイルス薬、脳代謝改善薬などの医薬品に応用されています。新型コロナワクチンで使われる重要な遺伝物質「mRNA」の原料も供給しています。

―今回のプロジェクトを開始するに至った背景を教えてください。

網谷さん:日本国内における醤油の消費量は、核家族化や女性の社会進出により食卓の様相が変わる中で、やや減少傾向にあります。一方、海外では北米を中心に多くの国に輸出され、海外の工場での生産量も年々増えています。このような事業環境から、ヤマサ醤油もグローバル化への対応を重要な課題として捉えていました。またIT投資で解決したい経営課題としては、経営判断に必要な業績情報を揃えることに大きな手間と時間がかかっていたことです。よって「迅速な業績把握と分析」を改善の主軸に置いていました。したがって、これらの課題を解決できる基幹システムの導入を検討していました。

―以前の基幹システムには、どのような課題がありましたでしょうか。

網谷さん:以前の基幹システム(以降、旧システムと呼ぶ)は、稼働開始から15年が経過しており、業務の属人化や情報システム管理室の人員不足の問題が生じて維持運営負荷が高い状態となっていました。旧システムは完全スクラッチ開発で、社内需要を細かく反映できた反面、システム保守が困難であることが問題でした。また旧システムは売上実績に重点を置いたシステムのため、売上は迅速に把握できていましたが、利益をジャンルや製品別、取引先ごとに分析するには大変な手間と時間がかかっていました。

パッケージソフトウェアの導入による現場負荷の軽減

―SAP S/4HANAを選択した理由をお聞かせください。
網谷さん(左向き)

網谷さん

網谷さん:これらの課題を解決するために、国内パッケージを5種類ほどリストアップして検討をしました。SAPのパッケージは当初の検討には含まれていません。導入規模や費用が高い印象があり、ヤマサ醤油にとっては高嶺の花だと考えていたからです。しかし国内パッケージの検討中にSAP S/4HANAの存在を知り、ヤマサ醤油の現在の企業規模でも機能面、価格面で手が届くことがわかりました。グローバルでも扱えるシステムであることを前提としていたので、手が届くことがわかってから採用の結論を出すまでは早かったです。またヤマサ醤油は次世代の基幹システム構築にあたって「数十年活用できるシステム基盤を構築」することを基本方針としていました。ヤマサ醤油の事業は息が長いため、事業に合わせて長期間で運用・維持ができるシステムが求められるからです。しかしITの世界における激しい進化の流れにも対応が必要です。その観点でグローバルスタンダードであるSAPのクラウドパッケージであれば、時代に合わせてシステムも進化し続けることができると判断しました。保守性の観点では、SAPはベンダーロックイン(注1)にならないこともSAP S/4HANAを選択した理由です。

(注1)企業や組織のシステムが、特定ベンダーに過度に依存した状態になることでコストや工数の観点から移行が困難になる状態のこと。

―貴社にとって、SAP S/4HANAの強みはどこにあると思いますか。

網谷さん:基本業務機能が1パッケージに包含されている点は、作りこみによる業務の属人化やメンテナンス性の低下を避けられるため魅力的です。迅速な経営判断のために各業績データについてはグラフや表など様々な形で可視化することができ、経営層から現場までそれぞれがとるべき行動の意思決定に大きく貢献できます。また先ほど申し上げた通り、SAPはグローバルスタンダードとしてのポジションを確立しています。これはシステムを長く利用したいというヤマサ醤油のニーズと合致します。拡張機能・法制度対応機能が継続的に提供され、製品サポートサービスが24時間365日受付可能と手厚いことも強みだと思います。

―導入支援でテクノスジャパンを選択した理由をお聞かせください。

網谷さん:パートナーを選ぶときは、テクノスジャパンを含む5社からコンペ形式でご提案をいただいたうえで社内検討しました。テクノスジャパンにご提案をいただいたきっかけは、パートナー候補を探していた際にHPを拝見したことです。コンペに至るまで複数のベンダーとやり取りをしましたが、他のベンダーと比べてテクノスジャパンが最もヤマサ醤油に足を運び、私たちのニーズを汲み取ってくれました。営業の方も大変深い領域まで業務やシステムを理解していたように感じます。ですのでコンペの際もテクノスジャパンの提案が、一番私たちのニーズを反映していました。細かい部分までヤマサ醤油の意思が反映された提案だったため、費用感は他社よりも高かったです。しかし我々の意思やニーズを汲み取ろうという誠意のある姿勢から、頭ごなしの表面的なコンサルではなく、ベストパートナーとして真剣にプロジェクトを一緒に推進してくれる期待と信頼がありました。提案に至るまでヤマサ醤油の課題解決のために何回も真剣な議論を重ねたことで、テクノスジャパンとの絆が生まれていたと思います。

属人化の解消と人材配置の効率化の実現

―SAP S/4HANAを導入後、どのような効果や変化があったかを教えてください。

網谷さん:ヤマサ醤油は施策を実行する際に「リターンは何か?」ということを必ず考えます。
SAP S/4HANA導入によって得ることができたヤマサ醤油のリターンは大きく8つです。

  1. 原価計算の強化
  2. 収益分析の強化
  3. 予算管理の強化
  4. 貿易(輸出)業務の強化
  5. 受注・出荷業務の効率化
  6. 物流部門の強化
  7. 購買発注の全社展開
  8. 情報システム管理室の戦力維持
網谷さん(右向き)

網谷さん

SAP S/4HANA導入では「迅速な業績把握と分析」が大きな目的でした。収益分析と予算管理が強化されたことで各製品原価や取引先別収益など、多彩な切り口で分析できるようになりました。ヤマサ醤油では年初の頻度で当期予算策定を実施しています。しかし期中で新製品の発売があり、新製品の情報は予算には反映されていません。ですので期初から半年も過ぎると新製品発売の影響により予実が整わなくなります。その対応として、新しいバージョンの予算を策定するため期中に大変な手間と時間をかけて業績データの収集が必要でした。それがSAP S/4HANAの導入によって多彩な切り口の業績把握をリアルタイムできるようになり、各事業部門が能動的に予算管理ができるようになりました。これにより予算策定の期間が大幅に短縮できています。
また原価計算、貿易(輸出)業務、物流部門の強化は、mcframeやTOSS、WMSなど他のソリューションとのシステム連携によって実現しました。
業務プロセスはSAP S/4HANAのパッケージに極力合わせる形で改善を行いました。できる限り例外処理にあたる枝の業務プロセスを作らないように徹底的な議論を重ねました。このため大きく業務効率化が実現されています。

(具体的な業務効率化の例)
1. 締め請求書作業にかかる時間が60%低減
2. 入庫明細数の87%で自動振替を実現
3. 貼り品番振替における1日30分間の手作業が廃止

また他社のプロジェクトでは、導入メンバーが導入後も運用・保守に残っていることが多いです。しかしヤマサ醤油のシステム担当者のスキル向上で運用・保守の対応ができるようになり、本プロジェクトでは早々にテクノスジャパンの保守センターに引き継ぎができました。ヤマサ醤油の中で従業員のスキルが向上してシステム担当者の対応できる範囲が拡がっています。パッケージソフトの標準機能活用によりシンプルな業務プロセスとなっているので、情報システム部門にシステム開発未経験者を配属することができるようになりました。こうしたシステム化による属人化の解消によって、単純作業で必要だった人的リソースをより生産的な業務へ大幅なシフトができる状態となりつつあります。

―テクノスジャパンの評価についてはいかがでしょうか。

網谷さん:テクノスジャパンはコンペにおける準備やプレゼン内容、質問回答が堅実で、信頼に値すると感じました。プロジェクトに入ってからは意見の押し付けもなく、ヤマサ醤油と目線を合わせた業務分析をして、適切な助言をしてくれました。ユーザー側の声をしっかりと聞いてくれたので意見交換もしやすかったです。「SAP万能論」をよく聞きますが、ヤマサ醤油ではベストオブブリード(注2)で生産管理を別パッケージによる構築でSAPと連携することにしました。テクノスジャパンにはSAPのパッケージだけではなく、周辺システムとの連携にも深い知見があって助かりました。また他のベンダーとの打合せにも積極的に対応していただけたので、本稼働後もインターフェースによるトラブルが一切ありませんでした。

(注2)様々なベンダーの製品の中で、各分野で最も優れたハードウェアやソフトウェアを選択、組み合わせてシステム構築を行うこと。

お客様の声
網谷さん(ヤマサ醤油株式会社 本社前)

ヤマサ醤油株式会社 本社

網谷さん:今回のプロジェクトはリターンも大きく、期待を上回る成功という結果でした。プロジェクトの進行としては、計画を2年間も前倒してグローバル展開の検討が進められています。これはメンバーのスキルアップが思った以上に早かったことが理由です。今回の成功の大きな理由は、プロジェクトに関連するメンバーが一丸となり徹底的な議論を行ったことだと思います。今回のプロジェクトでは業務プロセスを極力パッケージに合わせる形で改善を行ったので、最低限のアドオンに絞り込みました。ですので業務をシステムに合わせるために工夫が必要です。それでもどうしても必要な機能は外付けで対応することも実施しました。要件定義の際にはシステム要員と業務責任者が常に対になって、各業務の「なぜやるのか?」という目的意識のベクトルを合わせる議論を徹底的に行いました。システム要員の妥協しない姿勢が業務責任者にも伝わり、業務責任者も真剣に知恵を出すという相乗効果も生まれていたと思います。これが部分最適から全体最適への完全シフトという本質的な業務効率化を実現することができた理由の根幹です。
SAP S/4HANAはもちろん素晴らしいソリューションだと思います。ただしプロジェクトの成功という観点ではシステムの良し悪しよりも、全社および関わるパートナーがどれだけの意思と覚悟をもって真剣にプロジェクトへ向き合えるかということが重要です。